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「放射能とお米」天地米店小澤量のHave a Rice Day! ラジオフチューズ2020/12/8

投稿日:2020年12月8日 更新日:

 この番組もあと二回の放送となりました。

 今日は、お米と放射能についてお話します。

 平成23年西暦2011年三月十一日、東日本大震災が起こりました。地震と津波のために、福島第一原子力発電所が爆発して、東日本を中心に放射能をまきちらしました。

 直後、流通が止まったお米を量販店で買えない消費者が、米屋に押しかけるというお米パニックがありました。ああなると、何をどう説明してもわからないという心理、ちょっと悲しいですね。

 さらに、その年の新米時期から多くなったのが、前年の平成22年産のお米を大量にストックしたいというのと、出来るだけ福島から遠いところ、西日本の新米を買いたい、というものでした。

 放射能を大量に含むであろう東北関東の新米を嫌ってのことです。特に、子育て世代に顕著でした。仕方ないですよね、怖いですから。

 では、実際に、お米はどの程度放射能被害を受けたのでしょうか?

 まず、私自身、何も知りませんでしたので、事故のあとから、お米と放射能について調べ始めました。

 過去のデータは、すぐに見つかりました。今は、直接ネットでは見られないようになっていますが、当時は、無造作に国の研究機関のホームページに載っていました。国は、1959年からずっとお米と麦と土壌、土ですね、これらの放射能数値を計測していました。

 びっくりしました。過去の放射能数値が非常にひどかったからです。

 特に悪かったのが、1960年代。この話をしますと、「なんで?」と聞かれますが、第二次世界大戦後、欧米各国が競って原子爆弾、その後は、水素爆弾、水爆ですね、その実験を世界中で行っていました。有名な事件があります。第五福竜丸事件。1954年、昭和29年府中市が誕生した年ですね、アメリカがビキニ環礁で行った大規模水爆実験の被害です。映画ゴジラが作られるきっかけともなりました。

 そして、1962年、アメリカが行った大量の連続水爆実験、ドミニク作戦、最後の集中的な大気中の実験、これが世界中に放射能を降らせました。

 この影響で、1963年の日本のお米の放射能数値がもっともひどかったのです。正確に言えば、世界中のあらゆる農産物・海産物そして飲料、すべてがひどかったと思われます。

 数字で説明します。

 現在、国の規制値は、一般食品一キロに対して、100ベクレルとなっています。これは、食品飲料全体で、年間一ミリシーベルトを超えないという設定での数字です。

 これが高い低いの議論がありますが、ここでは無視します。

 では、1960年代、震災後、そして今。お米の放射能はどうなのでしょうか?

 1959年から3から5ベクレルだったのが、1963年に一気に12です。これは平均値で、最大値は、20です。アメリカの実験の規模がわかります。それから、ずっと減り続け、1970年代は、1以下に、2000年には0・05以下に。

 で、震災の年にはどうなったでしょうか?

 福島の海側と運悪く放射能の雲が回ってしまった一部の地域を除くと、一番ひどいところで、だいたい20くらいだと思われます。思われますというのは、検査数が多すぎて、細かく下限値を下げて調べられていないからです。どこでも、下限値が20くらい。20以下だと、ND、検出されないという結果だけで、具体的な数字がわからないのです。

 しかも、ややこしいことに、水爆からは、セシウムが一種類だけなのに、原発からは二種類出ています。下限値20で非検出の場合、合算で40ということもありえます。1963年の最悪で20ですから、倍になってしまいます。

 都道府県の検査ではあまりに雑なので、当店は、下限値を下げて検査してもらいました。  

 一番低くて1ベクレルという検査でした。

 結果は、千葉県と山形県のお米で、最悪で1ベクレルを少し超えました。他は1ベクレルでも非検出でした。

 福島原発との距離や気象条件、また土地の持つ条件などもあり、一概には言えませんが、実は、ほとんどのお米は、過去と比較しても、1960年代後半から1970年代のお米と同じレベルの放射能だったと推定しています。

 それから、毎年、放射能は減り続けています。水爆の中の放射能セシウム137の半減期、半分になる期間が30年なのに比べて、原発の場合、半減期が二年と短いセシウム134が半分入っていますので、減り方は早いはずです。

 まとめると、福島第一原発事故直後の一部の地域のお米を除けば、1960年代のお米より放射能汚染を受けたお米はないということです。

 マスコミではほとんど聞かない情報ですが、きちんと過去と現在のデータを把握すればわかることです。

 言いたいことは、だから安心だということではありません。放射能などないほうがいいのは当たり前です。でも、過去の水爆実験、旧ソ連のチェルノブイリ事故、その残滓はまだ残っています。福島第一原発事故の影響もまだまだ続きます。

 そんな現在、現実をできるだけ正確に認識したうえで、自分たちが食べる物を判断していくことがなにより大事です。今日の情報が、そのための一助になれば幸いです。

 なお、過去放射能データがもっともひどかった1960年代は、まさに、私の幼少期です。過去のデータを見たときは、「まじかよ、自分たち世代の健康をもっとも心配して欲しい」と感じました。

 次回がいよいよ最終回となります。

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