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「お米と日本の歴史その4」天地米店小澤量のHave a Rice Day! ラジオフチューズ2019/10/15

投稿日:2019年10月15日 更新日:

 過去三回、日本の歴史とお米の関連性を取り上げました。皆さん、どんな風に聞いていただけましたでしょうか?感想いただけると嬉しいです。

 そして、今日は、お米にまつわる数字を取り上げようと思っていたのですが、どうやら、また、歴史にまつわる話になりそうです。スピンオフとでも言いましょうか。江戸時代のお話をほとんどしていないので。自分でも笑ってしまいますが、今回が本当の最終回。

 まずは、以前にもお話しました、お米一石から始めます。

 お米一石、150kg。一石とは、人一人を養えるお米の量でした。今は、60kg未満ですので、昔は、どれだけ食べたか、逆に言うと、他に食べるものがなかったかがわかります。

 加賀百万石、よく聞く言葉ですよね。江戸時代、加賀藩は、現在の石川県全体と富山県の大部分を支配していました。百万石とは、つまり、百万人を養える土地。江戸時代初めに百万石だった石高は、幕末に134万石。幕府を除けば、ずっとナンバーワンでした。この石高が経済的余裕となり、漆や金細工、染物に陶磁器。今に続く、金沢の文化工芸を支えました。武力ではなくて、文化工芸にうつつを抜かしているように見せたのは、豊臣恩顧という立場でいつ幕府につぶされるか戦々恐々だったための苦肉の策だったという一面もありますが。

 ちなみに、徳川幕府は、四百万石。さすが幕府、すごいですね。ただ、江戸時代初期には伸びましたが、中期以降はあまり伸びてはいません。

 ところで、江戸幕府を倒した勢力。薩長土肥。こういう勢力はどうだったのでしょうか?

 薩摩は今の鹿児島県、長州は今の山口県、土佐は今の高知県、そして、肥前は今の佐賀県。

 薩摩は、シラス台地という水はけがよすぎて、栄養分のない土地柄のため、米作りには適していません。それでも、江戸時代、73万石から87万石に増やしています。さらに、シラス台地でも作れるサツマイモなどで食糧を補いながら、琉球や奄美大島などでの黒砂糖作り、朝鮮陶工による焼き物などで藩の財政を立て直し、西洋式の武器を購入し、工作機械や紡績機械による工業化まで進展させました。

 次に今の山口県の長州藩は、37万石から98万石まで、なんと2.65倍です。

 国中で新田開発を行いましたが、特に、海の干拓で田んぼを増やしました。さらに、紙・塩・ロウを加えて、防長四白と呼ばれる産物で、幕末に向かって藩の金庫を積み上げていきました。

 そのお金を、西洋式の軍備品購入に使いながら、同時に京都祇園で湯水のように使い、公家や他の藩との交流交渉を通じて、幕末騒乱の中心的役割を果たしていきます。

 次は、肥前藩。36万石から89万石に増加です。2.47倍。こちらもすごい伸びですね。

 「肥前者が通った後は草も生えない」という言い方があります。この言葉は色々な解釈があるようですが、肯定的でも、否定的でも、肥前人の生真面目さがポイントです。

 佐賀肥前藩は、藩主がリーダーとして質素倹約を励行し、役人を五分の一に削減するなど支出を削減し、米の増産を基盤として、特産品の焼き物、お茶、ロウ、石炭などの換金作物の育成と交易で財政を改善しました。

 教育にも力を入れました。藩士に26歳まで勉強を強要する強烈な人材育成と、様々な海外の技術の導入で、幕末の最も強大な武器の製造と修理の能力を持ちました。

 幕末最後の討幕のいくさ、上野の彰義隊を壊滅したのは、本家のイギリスでも実戦で使えなかったアームストロング砲。これを製造して新政府軍に提供したのも肥前藩でした。

 慶応3年(1867年)、パリ万博に、肥前藩は参加し、出品箱数は政府の246箱、薩摩の225箱に対し、何と526箱も出品しています。いかに、産業が育成されていたかがわかります。

 肥前藩の教育と産業が育成した人材が、明治以降、様々な分野で今の日本の基礎をつくりました。例をあげれば、日本赤十字社・早稲田大学・東芝などです。

 最後に、高知県土佐藩です。土佐は、米作りにはあまり恵まれた土地ではありません。耕地面積も狭く、20万石から、50万石への増加です。それでも、2.5倍。頑張って新田開発したんですね。ただ、換金作物が木材くらいしかなく、幕末は、大変な借金状態でした。まあ、ほとんどの藩が借金に苦しんでいましたので、長州や肥前が特別だったんですね。

 土佐藩はその借金から逃れられると思って、三菱商事の創業者、土佐藩士の岩崎弥太郎と取引します。土佐藩の借金をつけて、大阪の土佐藩邸と汽船を譲るという内容です。

 日本最初の株式貿易会社海援隊を作った土佐藩士の坂本龍馬の思想が、三菱の誕生につながったともいえ、土佐藩も間接的物理的に日本の産業の発展に貢献したとも言えます。

 今日のお話をまとますと、藩によって土地の条件が異なりますが、この四つの藩は、河川の改修、用水路の確保、海での干拓事業などで、江戸期を通じて石高を増やして、食糧事情を安定させ、余剰分を現金に換える他、他の商品作物の開発により、藩の財政を豊かにして工業振興を行い、武力の前に、経済力で幕府を圧倒していました。その根本となる基盤が、石高増強でした。

 今日はここまです。

 次回は、十月二十九日火曜日です。今度こそ、いったん歴史から離れたいと思います。

 皆さん、お米について知りたい聞きたいことがあれば、何でも結構です。是非、ラジオフチューズまでメールをお寄せください。

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