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「糖質制限 その8」天地米店小澤量のHave a Rice Day! ラジオフチューズ2020/11/10

      2020/11/13

 先回は、特にイヌイットの例をあげて、特殊事例を持ち出して、糖質制限を正当化することのおかしさを、歴史的に科学的に話しました。

 今回は、糖質制限派が持ち出すケトン体の話です。

 イヌイットのように肉食中心で、たっぷり脂肪を摂取している場合、体の中で何が起こるのでしょうか?

 糖質を摂取しないので、まず、脳などが必要とするブドウ糖を糖新生という方法で作ります。材料は、筋肉です。具体的には、たんぱく質と脂肪です。

 でも、糖新生の産生能力には限界があります。当然ですよね、筋肉がなくなってしまいます。

 次に、脂肪を使って、ケトン体を作ります。ケトン体は、脳細胞がブドウ糖の代わりに使えます。

 ブドウ糖しか使えない脳細胞という言い方をよく見ますが、本当は、ケトン体も使えます。つまり、糖質がなくても困りません(そう主張されていますが、あとで詳しく検証します)。

 ケトン体は脂肪を分解して作られますので、脂肪も減り、体重も減り、さらには、最近では、むしろ、体に良いとされる様々な研究もあります。いいことづくめですね。

 なので、糖質を摂取しなくてもいい、いや、糖質摂取こそが万病のもとで、本来の人間の食事に戻せば、万事がうまくいく、これが、極端な糖質制限派の主張です。

 さて、本来の人間の食事、などという言い方がおかしいことは、既に説明しましたので、他のポイントについてお話します。

 まず、脳細胞がケトン体を利用できるというのは、一部正解です。

 たしかに、ケトン体はブドウ糖のように脳内に入ることができて、脳細胞がエネルギー源として使えます。ただし、脳細胞全体ではありません。

 脳細胞は、簡単に言うと、ニューロンとグリア細胞からできています。そして、グリア細胞は、ニューロンよりはるかに多いのです。全体では十倍ともいわれるし、大脳皮質では、四倍あります。

 このグリア細胞が、ブドウ糖しかエネルギー源として使えないのです。

 グリア細胞の役割は、これまで補助的なものだと考えられてきましたが、近年の研究で、大変重要な役割を担っていることがわかってきました。

 以下のような機能があります。

  • 神経細胞に栄養を与えたり、過剰なイオンや神経伝達物質を速やかに除去することにより、神経細胞の生存と働きを助ける。
  • 次に、脳を有害物質から守る血液脳関門をつくっている。
  • また、シナプス伝達効率や局所脳血流の制御という,脳機能にとって本質的な役割も果たしている。
  • そして、睡眠時に脳から有害物質を取り除く。

 発見から100年、グリア細胞は、ニューロンを支える「黒衣(くろご)」であると考えられてきました。活動を示す電位を発しないからです。しかし、たった一つの細胞で神経の生存環境の維持から神経伝達・脳血流の制御まで行うことができる、驚くほど多機能な細胞だということが明らかになってきました。

 さらに、グリア細胞は、長期記憶にも関係していることまで判明してきました。

 こういう細胞が、ケトン体では間に合わず、ブドウ糖を必要とするんです。

 かの天才理論物理学者・アルベルト・アインシュタインの脳は、グリア細胞の数が桁外れに多かったことが、発見されています。 

 脳細胞だけではありません。ブドウ糖は赤血球や腎臓の髄質、一部の筋肉を正常に動かすために使われており、1日に最低限必要な量はおよそ150gといわれています。ブドウ糖1グラムは、4キロカロリーですので、カロリーに直すと、600キロカリー。

 一日2000キロカロリー摂取とすると、3割です。

 極端な糖質制限主義者は、糖質を摂取しなくてもいいというようなことを言いますが、糖質を絶つことが、脳や体の働きにどのような悪影響を与えるか、イメージできると思います。

 最初にお話したように、糖質が極端に不足すると、体は脂肪を分解して「ケトン体」という物質を作り、グルコースの代わりにエネルギー源にします。エネルギー源がグルコースからケトン体に切り替わった状態を「ケトーシス」と呼びます。ケトーシス状態にあることをケトジェニックと言います。

 面白いことを紹介します。

 糖質制限派は、「イヌイットはケトジェニックだ!」という話をしますが、イヌイットの血液検査は1930年代から何度も行われていて、いずれも「血中のケトン体は高くない」という結論です。

 先回お話したように、イヌイットは、炭水化物は摂取しなくても、糖質はそれなりに摂取していて、なおかつ、長期間の食習慣で、ケトーシス状態にならない遺伝子変異を獲得しているんです。 

 糖質制限派の主張を根本で崩しています。

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