複雑系と反対の考え方が「要素還元主義」です。これは、今までの特に西洋科学 を支えてきた概念です。
肉体と精神を分けて考える(二元論)西洋医学がその分かりやすい例です。
「病は気から」と言いますが、肉体と精神が相互に影響を与えあうという このごくごく常識的な考え方は、科学としての医学ではきわめて軽視されてきました。
また病気が発見された時も、その原因を体や精神全体に求めることなく、病気が発症した部分だけを治そうという対処療法が中心です。
臓器同士の関連や、一つ の臓器が体全体に与える影響、また体全体がその臓器に与える影響を考慮することは、まだまだないのではと思います。
この、全体をパーツ(部分)に分けて、それぞれの問題を対処療法的に扱い、他のパーツや全体との関連・関係を無視する、という考え方は、実はすべての学問 領域に浸透しています。
経済学でも、余計に見える要素を除外し、出きるだけ簡単なモデルを構築し、残った要素を変更させるこ とで、全体への影響力を考えます。
しかし、要素同士が影響を及ぼし合うこと、全体がさらにその変更した要素に影響を与えることは、考慮しません。経済政策がうまくいかない理由もここにあると言えます。
情報が少ない昔ならいざ知らず、これだけ情報があふれている現在、政策当局者以外も政策の影響を先に 先に判断の基準に入れてしまいます。投資家や消費者も常に政策の影響を割り引きして行動します。こうなると、折角の政策も効果が半減します。